房総の祭事記 〜千葉の郷土芸能と民俗行事〜 モドル ホーム

川口のミノコオドリ'10

千倉町川口の鹿島神社の入口にミヤモトとよばれる家がある。午後、六名の氏子と十七名の少女たちは、まずこの家で御神酒をうけてからミノコオドリの奉納に出かける。神社を皮切りに、十ヶ所回り終えた後に戻ってくるのも、やはりこの家である。ミヤモトは別名セイメイノマツリヤシキともいうが、セイメイとは占師を意味する晴明であろうか。事実、同日朝に行なわれる湯立て式は、代々この家が司ることになっている。湯立てからミノコオドリまでの一連の行事はオビシャと総称され、区では一年で最も大切な日とされている。さて、浴衣姿の少女たちが御幣と扇を手に、輪になって踊るさまは、安房のミノコドリに共通の形態であるが、川口では音頭とりの氏子がそろって立鳥帽子をかぶり、さらに少女たちも含めてシタダレという白い肩かけを身につけているところが目新しい。その踊り方に、躍ねるような動作が見られることである。衣装とあわせて、まさに東海地方の鹿島踊り彷彿とさせる点が、実に興味深い。《館山市立博物館報 第四二号(平成五年三月二五日) 安房の郷土芸能誌6 「川口のミノコオドリ」》

川口のミノコオドリ


○口上
ヤーレ ヤーレ 鹿嶋には 日出たい事がきたりや申そう…(一同:ヤァー)
ずーと上なるにぎが 三百三十三人(一同:ヤァー)
下なるにぎが 三百三十三人(一同:ヤァー)
おいらのような かすにぎが 三百三十三人(一同:ヤァー)
合せて 九百九十九人のにぎ達が
おもしろい めの子踊りを おはじめ申そう
(氏子一同)
それもようござりましょう

○鹿嶋神子舞歌
(一)
ソリャー てんじくがなナ ちかいげでそよ
ソリャー たたらふむが オイナー きこえる(一同:大漁大漁)
ヨー   たたらをばナ なんとふみよそ
ソリャー たたらたんタンと オイナー やっとふむ(一同:大漁大漁)
(五)
ヨー   ありがたや かしまうらからヨ
ソリャー みろくのふねが オイナー つづいた(一同:大漁大漁)
ヨー   ともへにはナ いせとかすがのヨ
ソリャー なかは かしまの オイナー おおやしろ(一同:大漁大漁)
(九)
ソリャー 世のなかはなナ まんごまつだいヨ
ソリャー みろくみよが オイナー つづいた(一同:大漁大漁)
ヨー   なにごともナ かなえてくだされヨ
ソリャー なむやとうしょの オイナー うじがみ
(大神、ペロレトレ〜、大神、ペロレトレ〜)

夏のミノコオドリは“千倉のまっち”が始まる前の金曜日に行われる。
昼頃に鹿嶋神社に於いて関係者一同が集まり祭典が執り行われ、その後に直会となる。
子ども達が学校から帰って来て準備を整え、舞人一同がそろってから、ミノコオドリの奉納が始まる。

奉納日:七月 千倉夏祭り前日金曜日 12:30-祭典 13:00-直会 15:30-村廻り 16:30-終了
伝承地:千葉県南房総市千倉町川口523 鹿嶋神社 [当日の奉納経路図]