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千倉町の忽戸地区と平磯地区は、いずれも太平洋に面した漁村だが、どちらも同様に少年たちによる三番叟を伝えている。忽戸は荒磯魚見根神社で、平磯は諏訪神社でそれぞれ演じられるが、両社とも毎年七月の第二土日に祭礼を行っていて、そのときに三番叟が奉納される。三番叟は、老翁の姿をした神が天下泰平・五穀豊穣を祝って舞う、翁の芸能の一種とされている。能などでは、千歳・翁・三番叟の三者の舞を組み合わせて「式三番」ともいうが、千歳は稚児の役で面をつけず、翁は白色の尉面、三番叟は黒色の尉面を顔に当てて舞うのが一般的である。忽戸では、はじめ翁、次に三番叟、そして三番叟と千歳の順に舞う。平磯では、はじめ千歳、次に翁、そして尉、尉と千歳、最後に尉の順に演じられる。いずれも千歳役は面を付けない。対して、翁と三番叟・尉は面を付けるが、当地では特に面のことを御化身と呼んでいて、非常に神聖なものである。囃子方は、大鼓・小鼓・笛の楽器を用い、熟練者が行う。また、後見役がいて、厳粛な所作で面を少年に被せたり、舞の進行を指揮したりする。かつて、三番叟を演じる少年たちは、一週間前から精進潔斎し、穢れを祓って当日にのぞんだという。掛け声が入り、古語からなる台詞を舞い手同士が掛け合うなど、古態を残す貴重な民俗芸能である。《千葉県庁 教育振興部文化財課 指定文化財班》
忽戸三番叟
Nikon Df + AF-S NIKKOR 28-300mm F3.5-5.6G ED VR + SpeedLight SB-910
◎荒磯魚見根神社
白稚年間、忽戸村開村以来、忽戸(古くは古津渡)区民の氏神「春日さま」として崇敬厚く「天下泰平」「大漁万作」の守護神とされている。且つては春日神社と称し奈良春日大社を魚見根山に勧請して氏神としましたが、江戸時代にこの地の風土に相応しい、荒磯魚見根神社に社名を変更されました。祭神・天児屋根命は日本神話の「天の岩戸」開きで太神詞を立派に奏し、天照大神の出現を祈り其の美辞を賞さられ、天孫降臨で祭りを執り行う勅命を授かる。中臣藤原氏は其の子孫で代々朝廷の祭祀を司ったと伝う。七月第二土曜・日曜日の祭礼には千葉県指定無形文化財である忽戸三番叟が奉納される。