房総の祭事記 〜千葉の郷土芸能と民俗行事〜 モドル ホーム

洲宮神社御狩祭'16

洲宮神社のミカリ祭りは、普段は「ミカリ」と呼ばれ、神社の行事としては「御狩(おみかり)祭」と表記されます。毎年十一月二七日が初日「イチノビ」で、十二月三日までの一週間にわたっておこなわれています。本来は、旧暦の十一月二七日から九日間がその期間でしたが、現在はイチノビに限り、神事がいとなまれるだけです。イチノビの午前中に、旧戸の三〇数戸を中心に新戸の二〇戸ほどを加えた約五〇戸の氏子が三々五々、洲宮神社にお参りに行きます。氏子たちは千円の初穂料を出し、それで一年の祭りの費用を賄っていますが、昭和の末年までは、各戸が二升ずつの米を持ち寄り、一年間の祭りの際に用いたといいます。十五時過ぎ、社殿のなかで一通りの神事が行われ、その後に境内の西の隅、西に向けて竹に幣束をはさんで立て、米と塩と御神酒をまいて清めます。【昭和十年代以前の洲宮神社ミカリ祭の様子】昭和十二〜十三年(一九三七〜三八)頃までは、境内に別棟の籠もり屋があり、イチノビに若い衆が集まりお籠もりをしましたが、この建物がなくなってからは、おこなわれなくなったといいます。また、昭和十年前後までは、イチノビに、ウルチ米にササゲを混ぜ、塩気のない粥を炊いて参詣者にわけ、これを食べると風邪をひかないとされましたが、現在ではほとんど忘れられています。【今も物忌みの残る洲宮神社のミカリ】洲宮神社の特徴は、物(もの)忌(い)みという習慣が今も守られていることです。物忌みとは、普段の暮らしとは違いいろいろな行いを慎むことで、イチノビにはワラや竹、ほうきを触ってはいけません。昔は牛馬の餌となるワラを事前に刻んでおき、あらかじめ家の内や外を掃いておいたといいます。また、洗濯をしないという家もあります。ミカリの期間を通じて、女性は針仕事をしてはならず、針を持つと手が腫れるとされ、特に厳しく戒められていましたが、生活様式の変化によって、現在では生活への影響は少なくなっているようです。しかし今日でも、イチノビの十一月二七日に、勤め人が仕事に出かけることがあっても、農業にたずさわる人は、田畑にでることはありません。稲作中心の昔は、この時期に農作業はさほどありませんでしたが、花作りやレタスの栽培が盛んな現在は忙しい時期です。それでもこの日は、洲宮の畑に人影は全くありません。現在でもイチノビに、むやみに田畑に出てはいけないという習慣が守られているのです。《館山市教育委員会生涯学習課文化財係》 房総のミカリ習俗 《県記録選択文化財(無形民俗文化財)》

洲宮神社御狩祭 〜オミカリサイ〜
平成廿八年十一月廿七日 当日次第


08:30-11:00 氏子参り(初穂料1,000円) 約五〇戸
13:40-14:20 拝殿神事(祝詞奏上・玉串奉奠)、幣束祈祷(米・御神酒・塩) 神主と役員三名

午前の「氏子参り」から見学なさる方は、周辺には安房國一之宮の「安房神社」がありますので、空き時間に参拝もできます。

奉納日:毎年十一月二七日 08:30-14:20
伝承地:千葉県館山市洲宮921 洲宮神社