房総の祭事記 〜千葉の郷土芸能と民俗行事〜 モドル ホーム

田中荒生の虫送り'14

昔、現在のように農薬がなかった時代、春の田植えが終わり、稲の穂が実り始めるころ(七月下旬)に、稲穂や他の作物に害虫がついて農家を困らせていました。そこで虫が夜暗い中、明るいものに集まってくる習性を利用して駆除する「虫送り」が日本の農村地帯において全国的に行われていましたが、諸般の事情により四〇数年前に姿を消してしまいました。この「虫送り」は子供たちが主役でした。「虫送り」の数日前から子供たちはそれぞれの村々のお寺や神社に集まり、リヤカーを引いて村中の農家から、麦から・稲わら・竹・縄を貰って回りました。沢山の麦からや稲わらを使って、年上の子供は自分でたいまつを作りました。何本かのたいまつを作って残った麦からや稲わらは、村はずれの昔から決まっているところに(田中では現在の宮島親水公園)櫓を作ります。この櫓は、竹四本を立てて、縄で縛り、まわりをわらで囲い、高く積み上げます。櫓は高いものになると五メートルはありました。当日は、村の決まった場所に集まり、暗くなると年上の子供は一人一本ずつ火のついたたいまつをもち、後ろの女の子たちがちょうちんをもって、歌いながら田んぼのあぜ道を歩きます。「なんむしょおくっど いねたち虫 さきんたたせて よろずのむしょおくっど」(なんの虫を送るのだ、稲につく虫を先にして、いろいろの虫を送るのだ。)と、みんなで声を合せて歌います。村によっては、子供たちのたいまつ行列の後に、大人がはいるところもあります。「いねたち虫さきんたたせて、よろずの虫おくっど」と子供たちが歌うと、大人が太鼓を「ドン、ドン」と打ち鳴らします。歌声の後に太鼓が勢いよく響きます。たいまつの行列は、田んぼのあぜ道を回って櫓のところに向かいます。様々な虫はたいまつの火におびきよせられます。そこで最後に櫓に火を放ちます。麦からがパチパチと音をたてて燃え上がります。暗闇に真っ赤な火柱が上がって見事な夜景となります。遠くの村からも火柱が見えます。この火柱に飛び込んで焼き殺されてしまいます。こうして子供たちも大人と一緒になって稲や他の作物を虫の害から守ための行事を行いました。《田中交遊倶楽部》

田中荒生の虫送り


18:00 開会式
18:10 ジャズ演奏
19:00 九十九里黒潮太鼓
19:30 たいまつパレード
20:00 櫓点火

Nikon D800 + AF-S NIKKOR 24-70mm F2.8G ED

櫓型の虫送りで県内に残っているのは、九十九里町だけになってしまった。
※駐車は宮島池親水公園と妙覚寺周辺にあり
※日中の景観のみ撮影し、夜間の点火は撮影していません。

奉納日:七月 最終土曜日 18:00-21:00
伝承地:千葉県山武郡九十九里町田中荒生479 自然塾特設会場