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昔は、どこの農村集落も田植えが終りますと、『虫送り』を行いました。それは稲の豊作を願うため、「オークンド、オークンド、イネムシオークンド」と虫送りの唱え詞を歌いながら、松明を持って田の畦を廻り、害虫のウンカやズイムシを追い出そうとする呪術的な民俗行事だったのですが、農薬の普及により大方は消滅し、現在、南房総では富浦の青木と原岡の集落のみとなりました。貴重な文化財ですから、後世まで伝えられるよう願うものです。
《青木の虫送り》は、区が主催しますが、行事をするのは子供たちです。夕刻、JA農機倉庫に集合しますと、およそ2メートルの竹と稲わらで作った松明に火を付け、虫送りの唄を唱えながら、植え終えた集落の水田を廻って青木橋(昔の村境)まで害虫を送り出しそこで松明を焼き捨てます。
《原岡の虫送り》は、農業用の水利を管理をする、クザイ(貢済)と呼ばれる組織が主催します。クザイの役員が決めた期日に、先ず、皆が農道の草刈りを行ってから氏神の愛宕神社に集まります。氏神の愛宕神社に集まった農家の人たちは、神官から虫送りの祈祷と御祓いを受けますと、鉦を叩きながら、割り竹と稲わらで作った松明と、虫籠を持ち、集落の水田を廻ります。虫送りの出発地は、昔、クザイの井戸があった全昌寺の前からで、最後は岡本川に至り、松明と虫籠を流して終りとなります。今は大人だけ行いますが、第二次世界大戦までは子供もたくさん集まりましたから、たいそう賑やかでした。長い行列が鉦をカンカンたたき、「オークンド、オークンド、イネムシオークンド」と大声で歌い、夜中まで稲田を廻り歩いたのですから、まるでお祭りのような騒ぎだったわけです。
青木の虫送り
平成廿五年五月十八日 当日次第
Nikon D300 + 16-35mm F4G + 28-300mm F3.5-5.6G
ワイワイと騒ぎながら、農機具倉庫前でタイマツを作り、火の付いたタイマツを青木橋まで持ち歩いて終了になります。祭りを知らせる幟もありません、時間になれば集まり行事の準備をして始まります。いかにも村の行事です。華やかな場面などはありませんが、農村の豊作祈願の行事として今も続けられています。昔は川に投げ捨てていたようですが、現在は一ヶ所に集めて燃やしています。平成二五年の虫送りは快晴で風も余りなく、何事もなく終了しました。子供達が田を廻る時の囃子歌が、今回は即興の歌になってしまいました。
※五月第三土曜日が「富浦小学校運動会」と重なった場合は日程変更となる。
※要問い合せ:南房総市観光協会 0470(28)5307 / 道の駅 とみうら枇杷倶楽部 0470(33)4611