千倉漁港のすぐ近くにある「新吾の場」と呼ばれる一画に「入定まち」という市が立ちます。
むかし、千倉町の隣にある白浜町に西春法師という僧侶がいました。三一歳になった時、「私が入定した後、魂は化身して天空に昇り、布良の沖に輝く星になるだろう。そして、その星が輝くときには海がしけるから漁に出てはいけない」と言い残し入定したと伝えられています。以来、この地の漁夫はこの言葉を守り海難を免れてきたということです。「入定まち」はその西春法師の遺徳を称えて市をたてたのが由来とされ、花や野菜の苗、農具などが売られます。また、草餅(大福餅)も有名だそうです。
西春法師の縁日《入定まち》
08:00-11:00 農具市/新吾の場(南房総市千倉町北朝夷2898-1) ※千倉漁港付近
11:00-11:30 入定塚法要
12:00-19:00 農具市/西横渚集会所前広場(南房総市白浜町滝口7281) ※入定塚付近
◎西春法師とメラ星の民話
むかし布良浜の南の空に、赤いメラ星がともると、海が時化て人が死ぬといわれました。メラ星には、海で死んだ漁師の霊が宿り、その霊がサガ(北西風)にのって、同じ漁師仲間を連れにくるというものです。漁師たちは南の空に注意し、赤い星が出たらすぐ引き返そうとするのですが、そのときはもう、櫓は金縛りにあったように動かず、船は、メラ星に吸い寄せられ、沖の高波にのまれてしまうのです。なあぶね(延縄船)が漁に出るたびに後家さんがふえるので、この船のことを後家船とも呼びました。若い後家さんは涙にくれ、わざと時化に海に出て、メラ星からむかえにくる夫の霊を待ったといいます。メラ星は、入定星と呼ばれています。海難を予告するために、西春法師が生きながら穴の中に入り、入定(死ぬこと)して赤い星になったというのです。入定塚は、白浜の不動堂境内にあります。